投資の世界は複雑で、ときに混沌としているように見えますが、実は明確な原則があります。
その中心にあるのが、「市場は効率的である」という考え方です。
僕は、この原則を理解し実践することで、誰もが長期的に安定した資産形成を実現できると確信しています。
なぜ、このような結論に至ったのか?
その理由を、バートン・マルキールとチャールズ・エリスの共著『投資の大原則』を基に、分かりやすく説明していきたいと思います。
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の投資アドバイスではありません。
実際に投資を行う際は、自身の財務状況や目標、リスク許容度を考慮し、必要に応じて専門家にご相談ください。
1.市場の効率性
まず、「市場は効率的である」とはどういうことでしょうか?
これは、株価や債券価格が、その時点で入手可能なすべての情報を反映しているという考え方です。
つまり、株価は常に「適正」な水準にあるということです。
皆さんは、「でも、株価が上がったり下がったりするのは、市場が非効率だからじゃないの?」と思うかもしれません。
しかし、それは新しい情報が市場に入ってきたからであり、その情報を反映して価格が変動しているのです。
2.アクティブ運用の限界
この市場の効率性から導き出される重要な結論が、「アクティブ運用の限界」です。
アクティブ運用とは、市場平均を上回るリターンを目指して、頻繁に売買を行う投資手法です。
しかし、市場が効率的であれば、誰かが市場平均を上回るリターンを得るためには、別の誰かが市場平均を下回るリターンしか得られないことになります。
つまり、アクティブ運用で市場平均を長期的に上回り続けることは、極めて困難なのです。
3.インデックス投資の有効性
では、どうすればいいのか?
ここで登場するのが「インデックス投資」です。
これは、市場全体の動きに連動するように設計された投資信託(インデックスファンド)に投資する方法です。
インデックス投資の利点は、以下の通りです
・ 低コスト:運用にかかる手数料が低い
・ 分散投資:市場全体に投資するため、リスクが分散される
・ 透明性:投資対象が明確
・ 長期的な安定性:市場全体の成長に連動するため、長期的には安定したリターンが期待できる
それでは、具体的な例を挙げて、インデックス投資の有効性を見ていきましょう。
例1:S&P500インデックスとアクティブファンドの比較
S&P500は、アメリカの大手企業500社で構成される株価指数です。
S&P Dow Jones Indicesの調査によると、過去15年間(2005年〜2019年)で、S&P500インデックスファンドのパフォーマンスを上回ったアクティブファンドは、わずか12%しかありませんでした。
つまり、88%のプロの運用者でさえ、市場平均を上回ることができなかったのです。
これは、アマチュア投資家が個別銘柄の選択で市場平均を上回ることがいかに難しいかを示しています。
例2:長期投資の威力
次に、長期投資の威力を示す例を見てみましょう。
1926年から2019年までの94年間、S&P500の年平均リターンは約10%でした。
もし1926年に100ドル投資していたら、2019年末には約707,000ドルになっていたことになります。
なんと約7,070倍です、、、
極端な例ですが、長期投資の力を示しています。
投資期間が長ければ長いほど、短期的な変動の影響は小さくなり、市場の長期的な上昇トレンドの恩恵を受けやす胃ということです。
例3:複利の魔法
最後に、複利の効果を見てみましょう。
複利の効果とは、元本に対して得られる利息が、次の期間の元本にも加算されて再び利息を生む現象のことです。
つまり、元本と利息が累積されて、次第に利息が利息を生むようになるため、時間が経つほど投資額が急速に増加するという特徴があります。
例えば、25歳から65歳まで毎月10,000円を投資し、年利5%で運用した場合を考えてみます。
40年後の65歳時点で、総投資額は480万円ですが、運用結果は約1,530万円になります。
つまり、約1,050万円もの利益が生まれるのです。
※税金や手数料を考慮していません
これは複利の力によるものです。
得られた利益を再投資することで、利益が利益を生み出す好循環が生まれるのです。
ここで皆さんに質問です。
これらの例を見て、どう感じましたか?
「やはり投資は難しそうだ」と思いましたか?
それとも「意外とシンプルかもしれない」と感じましたか?
実は、多くの人が投資を難しく考えすぎています。
確かに、市場の動きを完璧に予測することは不可能です。
だからこそ、シンプルな原則に従うことが極めて重要なのです。
では、これらの原則を踏まえて、具体的にどのように投資を行えばいいのでしょうか?
以下に、実践的なアドバイスをまとめてみました。
- 長期的な視点を持つ
短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を行いましょう。
日々の株価の動きにとらわれず、5年、10年、あるいはそれ以上の長期で考えることが重要です。
→「いつ、何のために使うのか?」を考えること(教育費、起業、FIRE生活など) - 分散投資を心がける
「卵を一つのかごに盛るな」ということわざがあります。
これは投資にも当てはまります。
一つの銘柄や資産クラスに集中せず、幅広く分散することでリスクを軽減できます。
→eMAXIS Slim米国株式(S&P500)やeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)でOK - コストを意識する
投資にかかるコスト(手数料など)は、長期的なリターンに大きな影響を与えます。
低コストのインデックスファンドを選ぶことで、より多くのリターンを得ることができます。
→eMAXIS Slim米国株式(S&P500)=0.09372%、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)=0.05775% - 定期的に投資する
市場のタイミングを図ろうとせず、定期的に一定額を投資する「ドルコスト平均法」を活用しましょう。
これにより、市場の上下に関わらず平均的な価格で投資できます。
→積立設定する - 自動化する
可能であれば、投資を自動化しましょう。
給与から自動的に一定額を投資に回すなど、システム化することで、感情に左右されず継続的に投資を行えます。
→4と同じ - 再投資を活用する
配当や利息を再投資することで、複利効果を最大限に活用できます。
多くのインデックスファンドは、自動的に配当を再投資するオプションを提供しています。
→分配金コースで再投資型を選択する - 定期的に見直す
ライフステージの変化に合わせて、投資戦略を見直すことも大切です。
ただし、頻繁な変更は避け、年に1〜2回程度の見直しにとどめましょう。
→「いつ、何のために使うのか?」の進捗や新しい制度(新NISAなど)による
これらの原則は、一見シンプルに見えるかもしれません。
しかし、このシンプルさこそが、長期的な成功の鍵なのです。
「難しいことをやろうとして失敗するよりも、シンプルなことを確実に実行する方が賢明」ではないでしょうか?
ここで、よくある疑問にお答えしておきましょう。
Q1: 「でも、インデックス投資だと大きな利益は得られないのでは?」
A1: 確かに、短期的には大きな利益を得る機会は少ないかもしれません。
しかし、長期的には市場平均のリターンを得られる可能性が高く、それは決して小さな数字ではありません。
また、大きな損失を被るリスクも低くなります。
Q2: 「株価が下がっているときは、投資を控えた方がいいのでは?」
A2: 実は、株価が下がっているときこそ、チャンスかもしれません。
「安く買って高く売る」というのが投資の基本ですから、株価が下がっているときに定期的に投資を続けることで、長期的には有利になる可能性が高いのです。
Q3: 「インデックス投資だけでは、退職後の資金は足りないのでは?」
A3: インデックス投資だけで十分かどうかは、個人の状況によって異なります。
ただし、長期的に継続することで、予想以上の資産形成ができる可能性があります。
また、必要に応じて他の資産クラス(債券や不動産など)と組み合わせることで、より安定的な資産形成が可能です。
これらの疑問に対する答えからも分かるように、投資の成功は「知識」よりも「行動」にかかっています。
正しい原則を理解し、それを粘り強く実践することが何よりも重要なのです。
投資の世界は、一見複雑に見えますが、その核心は意外にもシンプルです。
「市場は効率的である」という原則を理解し、それに基づいて行動することで、誰もが長期的に安定した資産形成を実現できるのです。
具体的には、低コストのインデックスファンドを活用し、長期的かつ定期的に投資を続けること。
そして、短期的な市場の変動に一喜一憂せず、複利の力を信じて粘り強く継続すること。
これらのシンプルな原則を守ることが、投資成功の近道なのです。
最後に個人的な考えを一つ。
大切なことは売却時の価格、それだけです。
道中に大暴落が起きようと、最後に「いつ、何のために使うのか?」が満たせるようなら成功です。
シェイクスピアによる戯曲の通り、『終わりよければすべてよし』の思考でよろしいかと。
皆さんの資産運用の成功を、心からお祈りしています。
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